事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金とは、一言で言うと、企業にDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めてもらうために、国が用意した補助金です。たまたまコロナ禍の最中だったため「コロナ対策の一つ」とも言われていますが、国は2018年の経済産業省による「DXレポート」の発表からずっと、企業にDXの推進を促してきました。それは一体なぜなのでしょうか?「失われた30年」と言われるように、日本はここ30年位GDP(国内総生産)がほとんど変わっていません。その間にアメリカは何倍にも、中国は何十倍にも成長していますが、日本だけ横ばい。その理由の一つにDXに対する日本の取り組みの遅れが考えられます。下の「表(1)IT業界の事業分野による分類」を見てください。これはIT業界の事業分野を細かく分類したものです。

表(1)IT業界の事業分野による分類
ITやデジタルで括ると範囲は広く色々な企業が見受けられます。ただ、赤線を引いたGAFAと呼ばれるGoogle、Apple、Facebook、Amazonといった大手4社は、すべて「BtoCのWebサービス」という1つの業界に集中しているのがわかります。つまりウェブ上の顧客を捕まえた企業が巨大化しているのです。ウェブに絡めた事業が一番強いとも言えます。そして、GAFAのように大きく成長したデジタル企業が国を引っ張っています。しかし日本にはまだそういう会社がなかなか出てきていません。一般企業もネット活用が遅いせいで、産業が新陳代謝していません。30年前と同じような事業をしている人たちが沢山います。
そこで、日本でも2018年からDXへの取り組みを推奨しています。しかしなかなか進みません。それは国の経済が良くないためです。そこで国が始めたのが事業再構築補助金です。「事業の再構築、DXをするなら国がお金を出しますよ。」「やる気があるところにはお金を出すので、その分頑張ってチャレンジしてね。」というもので、本音としては「出さざるを得ない、お願いだから取り組んでほしい。」といった国の悲鳴のようなものだと感じています。というのは、この計画が2025年までにあまり進まなかった場合、2025年以降、毎年最大12兆円もの経済損失が生じる可能性が示唆されているためです。これを「2025年の崖」と呼んで警鐘を鳴らしています。
そもそもDXとは?
「DX、DX」と何度も繰り返してきましたが、そもそもDXとはどういう意味なのでしょうか。単純に「デジタル化」と捉えている方も多いので、改めてDXの本質についてご説明します。

図(1)デジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーション
「図(1)デジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーション」を見てください。左上の図は、フィルムカメラがデジタルカメラに変わったことを表しています。これは、「写真を撮る」という今までの役割は変わってないけれど、アウトプットされる写真の形が変わった、デジタル化されたということで、単純なデジタル化の例です。左下の図は、パソコンで手動入力していた作業が、自動化ツールで自動で実現できるようになったことを表しています。これも、実現したい目的は変わってないけれど、作業が自動化されたということで、単純なデジタル化の例です。何れも、デジタル・テクノロジーを使って既存製品の付加価値を高めたり、業務の効率化を図っており、こうした変化をデジタライゼーションと言います。
対して、右上の図は、今まではマイカーを持ち運転、車が使えない時はタクシーを使っていたけれど、今はカーシェアリングという仕組みで、必要な時に自由に車を使えるようになったことを表しています。カーシェアリングは、マイカー代わりにもタクシー代わりにもなるため、自由で便利な新しい移動手段として社会に大きな変化をもたらしました。また、右下の図は、今までは通勤ラッシュに耐えながら会社に出社していたのが、今はリモートワークを使い、自宅で仕事ができることを表しています。これにより、通勤ラッシュが軽減されるのは勿論、会社の近くに住む必要が無くなったならと、地方に移住する人も増えてきました。そうなると、企業の雇用の仕方も変わってくるでしょうし、働く人の人生そのものが変化していきます。
このように、デジタル・テクノロジーを使って経営や事業の在り方を変革する、生活や働き方を変革することをデジタルトランスフォーメーションと言います。デジタルトランスフォーメーション、DXとは、単純な業務自動化・業務効率化の話ではなく、もっと社会に対して大きな変革をもたらすようなもの、生活や働き方が大きく変わるような変革を伴うデジタル化を指すのです。
なぜ事業再構築補助金が注目されているの?
「いやいや、そんな大層な事はできないよ。」と思われる方が多いかもしれません。しかし避けて通れないのは、消費者の行動が既に変わっているという現実です。不動産屋の事例を元にお話しします。
「この駅で部屋を探している」という方がいます。昔は駅前の不動産屋へ行って探す、相談する、が当たり前でした。しかし今は事前にネットで探します。自分の条件に見合う部屋があったら、そこを扱っている不動産屋に連絡します。
不動産屋が駅前だろうが駅から遠かろうが関係ないのです。情報はネットで得られる、あとは内見予約ができればいい。こうしたことを理解すると、不動産屋は駅前に店舗を構えなくても良い、その分ネットに投資しよう、という考えに変わっていきます。

このように、消費者の行動は明らかに変わっています。探し方も変わっているし、あらゆる情報を手に入れることが可能になっています。そうなると、選ぶ判断基準も変わっていきます。多くの選択肢が増える中で、今までになかった選択肢を選びはじめます。その結果、従来のままの商品は今の消費者のニーズに合わなくなっています。ほとんどの産業において30年前の売り方、30年前の商品は、今の消費者の欲しい物ではなくなっているのです。「これはさすがに革新、改革しないとね。」というのが国の方針であり、事業再構築補助金の提供なのです。消費者の行動がウェブファーストになっている現状を踏まえると、「できるだけ補助金を出すから30年前の事業を改革して今の消費者ニーズに併せた事業を行ってください。」という提示なのです。

表(2)補助金の比較
「表(2)補助金の比較」を見てください。国の4大補助金と言われるものです。
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小規模事業化補助金
これは一般的で最も使用しやすい補助金です。標準で50万、賃金を上げたり等すると最大200万の補助金がおります。
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IT導入補助金
これは主にシステム導入で使われるものです。但し「ホームページを作ります」等、ウェブサイト制作は対象とならないようです。ECサイト制作なら可能な場合があるようです。
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ものづくり補助金
これは主に設備投資用に使われるものです。印刷の機械が必要だとか、何かをはじめるのに設備投資が必要な場合、そのための費用を申請できます。
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事業再構築補助金
これが最もハードルが高いけれど、最も補助率、補助額が高い補助金です。つまり、「一番やってほしいのは事業再構築であり、それにチャレンジしてくれるなら最大限の費用を負担しますよ。」という補助金です。
そして、事象再構築補助金は、いつ提供が終了するかもわからない、今だけのものでもあります。ハードルは高いかもしれませんが、今チャレンジするには一番おススメな補助金です。
概要
そんな再構築補助金について、簡単にポイントをお伝えします。
Point1 誰でも申請可能!
これまでは売上減少要件など、さまざまな条件があり、その条件にあてはまるかどうかの確認等、色々面倒でもありました。しかし今はそうした条件が無くなり、誰でも申請可能となっています。
Point2 小企業でも最大2,000万円の補助金(第11回公募)
公募回数を重ねる毎に、補助額も減少していくかと思われましたが、第11回公募時点でも、補助額最大2,000万円が決定されています。
Point3 建物代も対象
事業債構築にあたり、建物が関わってくる場合は、その建物代も対象となります。
とても使途が広いです。
そして公募については、令和5年度中にあと2回の公募を予定しています(図(2)令和5年度中の公募予定参照)。直近、第11回公募の〆切は2023/10/6で間に合わない方も多いかもしれませんが、第12回公募見込みが出てきており、その公募〆切は2024年2月上旬見込みと言われています。それまでに事業戦略を練り、事業計画書を提出すれば申し込みが可能です。リアルタイム情報は公式サイトをご確認下さい。

図(2)令和5年度中の公募予定
事業再構築の定義としては、図(3)事業再構築指針をご覧下さい。いずれにしてもどのような変革・改革にも対応可能な定義をしています。

図(3)事業再構築指針
大体のスケジュールについては、図(4)申請スケジュールイメージをご覧下さい。まず、申請前に事業戦略を練り、事業計画 書をまとめる必要があります。大体3ヵ月程度は見ておくとよいでしょう。その後、申請をして、採択の結果がわかるまで2ヵ月程度かかります。採択後、事業計画書に則った事業再構築をはじめるのですが、それまでの期間が約14ヵ月と結構短い期間です。事業の再構築なのでもう少し時間が欲しいところですが、国の規定なのでどうにもならず、ここが頑張りどころですね。その間に、見積書の提出や事業完了報告もあり、すべて完了したら補助金の交付が決定します。その後、年次報告が5年程度続きます。
